株式会社ヤヨイ
代表取締役社長
吉田賀美さん

PROFILE

大手外資系化粧品会社退職後、株式会社ヤヨイ入社。
父の後を継ぎ、2021年より現職。先代から受け継ぐ社長としての信念は、「正直な商売」。安全でおいしく、質の高い水産物商品の提供に努める。食育指導士の資格をはじめ大手料理教室講師、現役エクササイズ主宰、多方面の経験を活かして、グリーンコープ組合員向けの学習会にも力をつくす。

魚の生命(いのち)を扱う会社として、
海や環境のためにできることを。

脱炭素社会に向けて、どんな取り組みを行っていますか?

当社は、宮崎県産ちりめんじゃこ類や宍道湖産大和しじみ、カツオ、マグロのたたき類、カニ類などの水産物の卸問屋です。約28年以上にわたって、グリーンコープさんとお取引させていただいています。食品を取り扱う会社として常々、心を痛めているのがフードロス問題。身近な例で言うと、一般的にしらすは形が不揃いだったり、成長して大きくなり過ぎたりすると商品価値が下がり、端材品の様な扱いとなり、安価で取引されてしまいます。しかし、味自体はとてもおいしい、見た目の問題だけで食事で摂るのにまったく問題ありません。そこで当社では、各メーカーさんと積極的に連携を図り、そう言った原料を使った商品開発に取り組んでいます。現行では大きくなったちりめんじゃこを使った、骨太ちりめんじゃこ(宮崎県産)や直近では、宮崎県産大きなしらすちりめんの商品化を提案し、正式に販売した事もあります。
事務所においては、原発や化石燃料に頼らない「グリーンコープでんき」を導入。さらに、照明をLEDに変え、省電力化を実践しています。個人レベルでは、夏場のエアコンの温度を高めに設定したり、備品購入にマイバッグを使用したりも。例え小さな取り組みでも、みんなでやれば、確かな未来につながっていくと信じています。

そうした取り組みを行う際の思いやきっかけは?

わたしたち魚屋にとって地球温暖化は切実な問題です。昔から一定の漁獲量があった魚達が、近年になって不漁が続く事もあるように。しらすや他の魚達も捕れる時期や場所が変わってきているという情報をよく聞きます。あるメーカーからは、もしかすると10年後にはナマコが市場から消えてしまうかも知れないという話も。捕れていた魚が捕れなくなる。いるはずの場所に、いなくなる。こうした身近に起こっている異常な現象に、危機感を覚えています。
また、毎年夏場になると、どこかの地域で起こるゲリラ豪雨による水害。それによって水産物の生産工場が被害を受けるケースを耳にすることも珍しくありません。
学術的なことはわかりませんが、温暖化が影響しているのであれば、水産物に関わる会社として放おってはおけない。地球や魚たち、ひいては子どもたちの未来のために、微力でも何か行動を起こさないといけないという思いで、自分たちでできることから取り組んでいます。

脱炭素社会へ向けた取り組みを行っていて良かったと感じることは?

当社ではSDGsを考えた商品開発のほか、カーボンニュートラルを含めた持続可能な社会に貢献する事業展開に努めています。具体的には弊社はグリーンコープのカタログの魚のページの中では唯一環境包材にいち早く変えております。
弊社は海の生き物を扱う業界、近年今まで経験をした事がない位年々温暖化の危機感を加速すほど感じている中私自身が商品学習会で一番力を入れてお話ししている事。

もっと海の状況が温暖化影響で大変なこと知ってほしい、海の事に興味をもってほしい、そんな強い思い、願いで環境包材へ変えています。
地球に生きているのは人間だけじゃない。
魚も貝もカニも豚も牛も鳥も虫たちもみんな生きています。
私たち人間は温暖化の影響で気温が50℃になろうともエアコンなどの機器を使い何とか生きて行くことができるかもしれません。
ですが海水温が50℃になったらどうでしょう。
魚達は生きて行くことが出来ません。それは私を含め人間のせいです。
私一人では何も出来ない、だけどグリーンコープの組合員さん43万人にみんなで少しずつでも何か変えればきっと未来は変わるかもしれない。
今ならまだ間に合うかもしれない。
だから誰よりも先に環境包材へ変えて、少しでも組合員さん達に賛同してくれたらと思い変えました。
まだまだですが、少しずつ地球温暖化による海の影響などを話す機会を与えてもらい。
少しずつですが聞いてくださった方々が「本当だ。私たち人間の為だけではない」「海だって大変なんだ」と興味を持って頂ける様になりこう言った地球温暖化のお話も含めての学習会の依頼が増えて参りました。

こうした個々の取り組みは、確かにすぐに環境問題の解決にはつながりません。けれど、地道に続け、その大切さを周りに伝えていくことで、大きな力となっていくはずです。実際、お付き合いのあるメーカーさんや業者さんの方々とは日頃から情報交換しながらお互いにできることを実践し、脱炭素社会へ向けた取り組みの輪が徐々に広がっていると感じます。最初は一人だとしても、行動を起こすことで、きっと未来は変わる。今では、そう確信できるようになりました。

これまでの取り組みや体験を通して、自身のなかで変わったことは?

多くのことにおいて便利で、何でも手に入る現代の社会や暮らしを、わたしは当たり前に思って生きてきました。しかし、脱炭素社会やカーボンニュートラルについて知れば知るほど、これまでとは違う考え方や価値観を持つように。特に大きな変化は、日々のいろんな場面で「もったいない」という全てのものを大事にしたい気持ちが芽生えるようになったこと。省エネやフードロスにおいてもそうですし、日常生活においてもモノにも魂が有り大事に使い、捨てる前に何か利用できないだろうか、簡単に捨てるのではなくもう一度生命(いのち)を吹き込むことが出来ないだろうかと考えるようになりました。
その意識を大切にして事業においては、主力商品の包材を再生PETでつくられた環境包材に移行する予定です。これからも海や魚たち、地球の未来につながる、自分なりの取り組みを続けていきたいと思います。

食べものを無駄にしないためにも伝えたい「いただきます」の気持ち。
いただくのは生命(いのち)です。

自社の事業を展開する傍ら、グリーンコープの組合員さんを対象に水産物に関する学習会を定期的に実施しています。そのなかで、特に力を入れてお話しするテーマは「食のありがたさ」「いただく生命(いのち)の大切さ」です。わたしたちは、魚達の生命(いのち)を人々の暮らしにつなげているメーカーです。だからこそ、どんな食べもの、生命(いのち)にも感謝し、最後まで残さずに食べる大切さを伝える責任があると捉えています。参加した方からは、「食事前に手を合わせようになった」「子どもたちにも食べものを無駄にしないよう伝えています」といった、たくさんのお手紙をいただき、この活動の意義を実感しています。
あたりまえを、ありがたいと感謝し。簡単を丁寧に変えるだけで今の自分に、行く先は未来も変わるのではないかと信じています。